「2020年問題」という言葉を耳にされたことはありませんか?

「2020年問題」とは、東京オリンピックを境に不動産や雇用、教育など様々な分野において、問題が発生するリスクを示した言葉です。

不動産業界では、高騰していた東京都心のマンションを中心に、不動産価格の暴落が始まるのでは?と予想されており、これから不動産を買おうとしている人・売ろうとしている人はとくに気になるところなのではないでしょうか。

今回は、2020年問題だけではなく、消費税増税や生産緑地問題など、なにかと話題になっている日本の不動産マーケットについて、不動産エージェントの視点で解説します。

2020年以降に不動産価格が暴落するとされている3つの要因

2020年に不動産価格が暴落するといわれる背景には、次の3つの要因が関係しています。

  1. 消費税増税
  2. 東京オリンピック
  3. 生産緑地問題

1つずつ詳しく見ていきましょう。

消費税増税

1つ目の要因として考えられるのは、2019年10月からの消費税増税による影響です。不動産に限らず、これまでも消費税増税後は消費の冷え込みが見られています。

とくに近年は、「増税前」という状況が長く続いていますよね。5%から8%、8%から10%へと上がる前に、高額である不動産を買い切ってしまおうという人が多くいたため、今回の増税後の冷え込みは大きく、長く続くとも予想されるのです。

住宅ローン控除の延長住まいの給付金の増額など、政府によって増税後の買い控えへのための対策は多く取られることが決まっていますが、基本的に一度買ってしまえば長く買うことのない不動産。増税後に消費が一定期間落ちるのは避けられないでしょう。

東京オリンピック

2つ目は、東京オリンピック閉幕による影響です。

2013年にオリンピック開催決定してから、東京都心部の不動産価格は次のような理由で上昇しています。

  • 東京オリンピックに訪日する観光客のためのホテル・マンションの着工が進んだ
  • 売買利益を目的とする投資家の不動産購入が相次いだ
  • 建築費・人件費の高騰

オリンピック開催決定による好景気はオリンピック閉幕により低迷し、投資目的の不動産は高値のうちに売却され、建築費も従来の水準に戻っていくことから不動産価格が下落すると考えられています。

生産緑地問題

3つ目の要因は生産緑地問題の影響です。

生産緑地は、簡単にいえば都市部にある農地です。ただ普通の農地と違うのは、生産緑地法という法律によって管理されているという点です。生産緑地法では、生産緑地にかかる固定資産税や相続税を優遇していますが、その反面、所有者に対して営農の義務や厳しい生産緑地解除の要件を定めています。つまり生産緑地とは、簡単には宅地転用や売却することができない制限の多い農地ということです。

今ある生産緑地の多くは、1992年に生産緑地法によって指定された土地です。生産緑地解除の要件の1つには、「生産緑地指定から30年経過していること」とあります。つまり1992年から30年後の2022年に、多くの生産緑地が解除要件を満たすこととなり、宅地転用や売却される土地が多くなるのではないかと見られているのです。

2022年に解除要件を満たす生産緑地は、およそ東京ドーム2200個分。全ての土地が解除されるわけではありませんが、その多くが宅地として不動産市場に流入すると予想されています。流入した宅地に多くのマンション等が建設され、需要よりも供給量が上回ることから、不動産価格の下落が起こるとみられているのです。

不動産価格は暴落しないという見方も

ここまで、2020年に不動産が暴落するといわれる理由についてお伝えしてきましたが、その一方で、不動産価格は暴落しないという声もあります。

その根拠は次の3つ。

  • オリンピック後が購入のチャンスだと思っている人は多い
  • 外国人の流入
  • 「短期間貸し出し」の活性化

詳しく解説します。

オリンピック後を購入の契機と思っている人は多い

今現在、多くのメディアや書籍で「2020年に不動産価格が安くなる」と予想されています。そのため「不動産の購入の契機はオリンピック後だ」と考えている人が多くいます。

不動産を買いたい人が多いということは、需要が減らないということ。とくに利便性の高い地域や人気のエリアでは、結果的に不動産の大きな値崩れはないという見方もできるのです。

外国人の流入が増加

国土交通省はオリンピックに向けて外国人観光客の受入れに力を入れており、インフラ整備による交通アクセス向上や、宿泊・商業施設の充実など多彩な取り組みをおこなっています。この施策によって東京都心部の魅力が拡大。世界中から多くの観光客が訪れることが期待されています。

また、2018年12月の入国管理法の改正により、多くの外国人労働者の流入が見込まれているため、局所的には賃貸を中心とした不動産需要は今後ますます増えていくでしょう。

「短期間貸し出し」の活性化

新しい不動産ビジネスとして注目されているのが、「短期間貸し出し」サービスです。

近年、そのコストパフォーマンスの高さから「Airbnb」などの仲介サービスを利用して一般の民家に泊まる民泊や、ホテルのサービスがついたサービスアパートメントが注目されています。

また、ワークスタイルの多様化により、必要なときだけ利用できるシェアオフィスやコワーキングスペースの需要も着実に増加。「短期間貸し出し」サービスでは空き家やマンションの空室の有効活用が可能となるので、新しい時代の不動産投資・ビジネスとしてますます飛躍していくとみられます。

私が考える2020年以降の不動産マーケット

2020年後に不動産価格が暴落するといわれている背景とともに、「いやそこまで落ちないだろう」といわれている根拠についてお話してきました。ここで、不動産エージェントである私の見解をお話しさせていただきますね。

日本の人口と世帯数は今後、減少の一途をたどることは歴然としています。長期的にみて、不動産価格が下落する地域が出てくることは間違いないでしょう。

バブル世代の人たちが感じていたような「今買わなければ高くなってしまう」という感覚も薄れている中、これから不動産バブルが訪れることも想定しにくいです。

しかし周りを見渡してみると、サービス業界では外国人が多数採用され、トレンドの中心地などは多くの人でにぎわっており、賃貸の需要が衰えることはありません。

つまり、2020年以降も利便性やニーズが高い、立地や治安が良いなど、恒久的にメリットがある物件であれば、その価値は大きく下がらずに安定した推移をすると私は予想しています。

特に、ビジネスの中心である中央5区(新宿区、渋谷区、港区、中央区、千代田区)など人気エリアの物件は安定した人気を誇っており、オリンピック後でも価格の下落は少ないと考えられます。

「家を買うメリット」を考えてみましょう

ではここで、「家を買うメリット」について考えてみたいと思います。

家を買う人は、自宅を買う人と投資する人に分けられます。

しかしいずれの場合も、「家」というのは人が住まう場所ですよね。つまり人々の「快適な住まい」を考えて家を購入すれば、将来的に売ることも、貸すこともできるわけです。

これから購入されるご自宅だって、終の住まいになるとは限りません。エリアによっては、不動産価格の暴落も懸念されるこれからの時代。自宅も投資のように資産価値を維持していくことを考えて購入する必要があると、私は思います。

メリット1.快適な住まい

「快適な住まい」を得ることは、家を買う最大のメリットだといえます。しかし「快適な住まい」とは一体なんなのでしょうか?

人によって異なる見解をお持ちでしょうが、多くの人がもとめるのは「立地の良さ」です。

家を買えば、立地以外も自分好みの快適な住まいを作ることは可能です。好きな壁紙にしたり、設備を増やしたりすることだってできる。好きなように暮らしを楽しめるのです。家族の成長に合わせてリノベーションできるのも、家を買うメリットのひとつですね。

どんなに時代が変わっても「自分の家」を持つことは私たちの夢であり、その需要は普遍的だといえるでしょう。

メリット2.売却したときの売却益(キャピタルゲイン)

家を買うメリットの2つ目は、不動産投資の1つとして大きな売却益(キャピタルゲイン)を狙えること。不動産売買は単価が大きいので、物件価格や利回りの低下したタイミングを狙って購入し、高く売ることができれば、ひとつの売買で大きな収益が得られるという魅力があります。

近年は購入した不動産に居住し価格があがれば売却し、売却益で物件を買って住み替える「ヤドカリ投資法」という手法で、元々自己資金が少ない方でも大きな収益をあげる方もいらっしゃいます。マイホームの売却益にかかる税金は、大きな控除制度もあります。居住しながら利益が狙えることは、不動産ならではです。

メリット.3賃貸に出した際の収益(インカムゲイン)

3つめのメリットは、保有する資産(不動産)を貸し出すことで、運用益(インカムゲイン)である家賃収入が得られることです。

  • 人気のエリア
  • 利便性が高い
  • 物件自体に魅力

このような資産価値の落ちにくい物件は、入居率も高く安定しています。魅力の高い物件は、これからの時代も変わらずに求められるので、優良な不動産を買うことは堅実に収入を得ることができます。

グラフ

これから不動産を買う人が気をつけるべきこと

ではこれから不動産を購入する人は、どんなことに気をつけると良いのでしょうか?

住宅の「残存価値」を常に考える

「住宅の残存価値」とは、その建物にどのくらい価値が残っているのかというものです。

基本的に住宅は経年劣化するものですが、「住宅の残存価格」は経済や市場価格などのマクロ的な要素も関係するので、個人の力で決められるものではありません。

人気のエリア内など立地によっては、年数が経っていても残存価値の低下が少ない、あるいは上がる物件もあるので、慎重な物件選びがなにより大切です。

また住宅の造りや設備の良さや、しっかりとメンテナンスされているかという点もマンションの価値には多く影響するので、購入後の管理も重要になってきます。

「住宅の残存価値>ローン残債」を保つ

不動産を買うときに気をつけるポイントは、ローンの残債よりも住宅の売却金額が保てる物件を選ぶことです。

購入時点では住宅の価格と残存価値は等しいですが、住宅ローンを利用した場合、居住後の住宅ローンの残債と住宅の残存価値は必ずしも比例しません。

立地が良く、残存価値の落ちにくい物件を探すこと、またローンを組む金額を考えることが大切なポイントになります。

ローン残債をコントロールする

借り入れ額や「ローン残債」については100%自分に決定権があるので、銀行の借り入れ限度額や「住宅の残存価値」に見合わない住宅ローンを組まないことが重要です。

なぜこれが重要かというと、不動産は売却金額がローン残債を上回らなければ売ることができず、さらに借り換えにも応じてもらえない場合が多いからです。

売りたいときに売れないということをふせぐためにも、常に残存価格を把握し、ローンの残債を「住宅の残存価値」よりも低くコントロールすることが大切だといえるでしょう。

「貴重な現金を使って不動産を買うな」という声もありますが、収益を見越した不動産投資ではできるだけ現金を使ってローンを少なくすることが健全な経営だと私は思っています。

まとめ

 長期的にみると、不動産価格が暴落する地域がでてくることが間違いないでしょう。しかし、2020年に不動産価格が一気に暴落すると私は思っていません。とくに東京はもちろん、地方都市の中枢地域の需要が衰えるとは考えにくいです。

ただし増税やオリンピック閉幕、これから予想される金利の上昇は、不動産市場にとって向かい風となることは確か。向かい風に立ち向かうには、物件を選ぶことがなにより重要になってきます。

不動産の売り時・買い時は、市場動向や経済状況などのマクロ的要素も無視してはいけませんが、物件さえ選べばこれかの時代だって「ミクロ的要素=自分にとって最適なタイミング」で売買が可能なのです。