「あ、この物件見てみたい!」

と思ったとき、皆さんはどのような行動を取りますか?

おそらく、「掲載元の不動産会社に連絡する」と答えられる方がほとんどではないかと思います。

もちろん、その行動が間違っているということはありません。
しかし一度問い合わせをすれば、「その不動産会社のお客様」となってしまうということをあらかじめ認識しておかれるといいと思います。

このブログでは過去に1回の電話、問い合わせでその不動産会社からしか買えなくなってしまった事例も交えて、お話ししますね。

過去にトラブルに発展しそうになった事例

2年ほど前の話ですが、イーエムラボでご案内したお客様が物件を気に入られて、購入の申し込みを入れたときのお話です。

不動産を購入する場合、まずは購入の意思を示すため、「購入申込書」あるいは「買い付け証明書」と呼ばれる書面を売主側に提出します。

私がご案内したお客様は、この購入申込書が売主仲介様サイドから「白紙だ」と言われてしまったのです。

ことの発端

なぜ、せっかくお客様が購入の意思を示したにもかかわらず「白紙」と言われてしまったのか。

それは、お客様が私に案内を依頼する「前」に、売主様側の不動産会社に接触していたからです。

お客様は、日本語が得意ではない外国の方。
英語ができる仲介業者のサポートが必要なため、私にご連絡いただきました。

しかし私に依頼する前に、売主様の不動産会社に連絡し、案内までしてもらったということだったのです。

私には悪いと思ったお客様はこの背景を説明せず、私が再案内をし、買い付けを入れた……という流れです。

不動産業界の慣習

売主様の不動産会社は、「うちが先に案内した顧客だ」「一体、どういうつもりだ」と大激怒で仁王立ち。
鍵を返すタイミングで購入申込書を渡したので、その場はまさに修羅場。

不動産業界には「先に問い合わせをもらった方が優先」という“暗黙の了解”のようなものがあるのです。

すでに案内した顧客を、別の不動産会社がアプローチをかけて自社顧客としてしまう行為は「抜き」といわれています。
基本的には、この「抜き」行為はできません。

道徳的にどうか、業界的にどうか、という話は割愛しますが、私はしません。
少なくとも、積極的に抜き行為をするような業者はいないと思います。

これから不動産を購入される方に伝えたいこと

ドアキー

一度、案内してもらった不動産を他社から申し込む……ということは、ここまでお話してきたように簡単ではありません。

これは、問い合わせをしてしまえば不動産会社を変えることが難しいとも言い換えられます。

問い合わせをして、案内までしてもらい、「この物件が欲しいなぁ」と思ったとき。
もしここで、不動産会社の対応が悪かったり、担当者に不信感を抱いたりした場合でも、別の不動産会社から申し込みを入れることは困難になるかもしれないということです。

問い合わせの前に不動産会社を精査する重要性

不動産という、高額で、人生に大きく影響を与えるものを、気持ちよく買っていただくためには、問い合わせる前に不動産会社を精査するというのはとても大事なことです。

不動産は基本的に、広告掲載元以外の不動産会社でも購入することができます。
これはあまりご存じではない方が多いのですが、必ず知っておいていただきたいことです。

売り出される不動産は、「レインズ」という不動産業者しか閲覧することができないデータベースで全国の不動産会社に共有されます。
他社がレインズに掲載している物件を自社顧客に紹介し、取引が成立するというながれです。

なかにはその業者からしか買えない物件もありますので(囲い込み)そんな物件の場合は「残念ながらうちでは仲介できないんです」と正直に言ってくれる営業とつながってください。

▶レインズとはなにか不動産エージェントがわかりやすく解説

自社では紹介出来ないから「すでに決まってしまいました」と嘘をつかれたら、本当に気に入っている物件を買い逃してしまう可能性もあります。

ですので、自分のために動いてくれる担当者を見つけるのはとても大事なことです。

「物件探し」の前に「不動産会社探し」を

不動産取引では、売主側、買主側、それぞれに不動産会社がつくというのが基本です。
それぞれを別々の不動産会社が仲介する場合を、「片手仲介」といいます。

しかしなかには、売主、買主を同じ不動産会社が仲介することもあります。
これを、「両手仲介」といいます。
両手なら仲介手数料を2倍受領できますので、不動産会社としてはなんとかして両手成約を狙いたいと思っているものです。

冒頭でお話した事例で不動産会社の担当者が激怒した要因は、両手仲介ができるチャンスを損なってしまったからということなんです。
(イーエムラボとしても悪気があった訳ではないのです)

ただ両手仲介というのは、あくまで不動産会社の希望であり、結果論。
不動産を購入される方にとっては、両手仲介だろうが片手仲介だろうが、希望する物件を購入できれば問題ないはずです。

しかし不動産業界の慣習的に、一度、問い合わせてしまえば他の不動産会社に乗り換えることが難しいもの。だからこそ、「入口」となる不動産会社は十分に精査していただきたいと思います。

問い合わせをするということは、年収やご勤務先、貯金額などをさらけ出すことになります。
そして、大事な不動産取引を最後までサポートしてもらうことにもなるかもしれない相手です。

不動産売買では、ときにスピーディーな行動と決断が必要になります。
しかしその前に信頼できる不動産会社に出会っておくというのが、不動産購入を安心して進めていただく一つのポイントになるのではないでしょうか。

まとめ

「気になる物件をすぐに見たい!」と思われる気持ちは、とてもよくわかります。

ただその先の「安全」「安心」のためにも、その前に、信頼できる不動産会社かを精査するのがたいせつです。

内見の申し込み以外でも、不動産会社と接触することは可能です。
まずは具体的に物件を探す前に、いくつかの不動産会社に「相談」をしてみてはいかがでしょうか。相談していく中で、「この人は話を聞いてくれる」「信頼できる」という担当者、不動産会社が見つかるはずです。

実はつい数日前にも「すでに問い合わせがあった人だから、そちら経由では内見させない」と大手仲介会社から言われてしまいました。

本当に分かりづらい不動産業界の暗黙ルールですので、分からないことがあれば、お気軽にお問合せください。