緊急事態宣言が明けてからというもの、住宅の売れ行きは、マンション・戸建ていずれも好調です。特に、戸建住宅の販売数が伸びているのをご存じでしょうか

戸建住宅の需要が伸びている理由は、新型コロナウイルスによって人々の暮らしや住宅にもとめるものが変化したためだと考えられます

そこで今回は、戸建て需要が増加した背景について詳しくお話ししていきます。

新型コロナの影響で戸建住宅の需要が増加中

まずは、新築戸建住宅と中古戸建住宅の需要がどれだけ伸びているのかを確認していきましょう。

新築戸建住宅(戸建注文住宅)

主要ハウスメーカーごとの戸建注文住宅の受注実績は、以下の通りです。

◯2020年11月 戸建住宅受注状況の前年同月比

※各ハウスメーカーのホームページをもとに筆者作成

上記の折れ線グラフは、戸建注文住宅における受注状況の前年同月比を表しています。

緊急事態宣言が発令された2020年4月と5月は、どのハウスメーカーも受注状況が大きく落ち込んでいます。これは、ハウスメーカーが事業所やモデルルームを閉鎖したためでしょう。

しかし緊急事態宣言が解除されたあとは、受注実績の前年同月比が上昇に転じています。特に住友林業は、2020年9月に前年同月比+40%を記録。前年同月比がずっとマイナスだった大和ハウス工業も、2020年11月にプラスに転じました。

なお、新築戸建住宅の需要が増えているのは、日本だけではありません。米国では、10月における新築戸建ての住宅販売件数が、前年同月比+41.5%と大幅に伸びています。※出典: 日本経済新聞(2020年12月17日付)

中古戸建住宅

中古戸建住宅の成約件数も、順調に増加しています。以下のグラフは、首都圏における中古戸建住宅件数の推移を表したものです。

※出典:東日本レインズ

2020年4月における成約件数の前年同月比(赤の折れ線グラフ)は、大幅に落ち込んでいるものの、その後V字回復しました。10月には前年同月比+41.8%、11月は+23.6%と好調に推移しています。

一方で、中古戸建住宅の在庫の前年同月比(青の折れ線グラフ)は、減少しているのがわかりますね。中古戸建住宅の需要に対して、供給が追いついていない状態であるといえます。

新型コロナの拡大により住宅を探す人が増えた

新築戸建住宅と中古戸建住宅の両方で、緊急事態宣言の終了後に需要が伸びました。これは、新型コロナの感染拡大が、住宅の検討や購入を後押ししたためであると考えられます。

株式会社リクルート住まいカンパニーの調査によると、新型コロナの感染拡大が、住宅の購入・建築を検討している人の住まい探しに、以下のような影響を与えました。

※出典:株式会社リクルート住まいカンパニー「第2回 コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査

上記結果の「促進された」は、アンケートで「住まい探し始めのきっかけになった」「住まい探しの後押しになった」「契約の後押しになった」と回答した人です。

2020年9月調査では、住宅の購入を検討している人の約2〜3割が、コロナの感染拡大によって、検討・契約が促進されたと回答しています。また5月と9月の調査を比較すると、首都圏では、促進されたと回答している人の割合が、22%から33%へ増加していますね。

わたしの周りでも完全に以前の生活に戻ったというビジネスパーソンはいませんので、特に首都圏の方は自宅で仕事をする機会が増え、住宅の環境を考える人が増えているのだと思います。

次に、購入するなら戸建て住宅とマンションの、どちらが良いか調査した結果をみていきましょう。

※出典:株式会社リクルート住まいカンパニー「第2回 コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査

首都圏では、2020年5月の調査で戸建住宅派が大幅に増加しました。9月調査では、わずかに減少しているようですが、2019年12月時点よりも戸建住宅派が増えていることに、変わりはありません。

なお、2019年12月の調査と2020年9月の調査を比較すると、札幌を除く全ての地域で、戸建住宅を希望する人が増加しています。

戸建住宅の需要が増加している理由

では、なぜ新型コロナの感染拡大によって戸建住宅の需要が増加したのでしょうか?理由として考えられるのは、以下の4点です。

  • 仕事スペースを確保しやすい
  • 庭や屋上など遊べるスペースを確保できる
  • ウイルス対策がしやすい
  • 低金利な住宅ローン

それぞれの理由について、みていきましょう。

仕事スペースを確保しやすい

戸建住宅の需要増加には、テレワークや在宅勤務を推奨する企業の増加が大きく影響しています。リクルート住まいカンパニーの調査では、住まいの検討のきっかけとなった理由を「在宅勤務になった/増えた」と回答した人が17%いました。※出典:株式会社リクルート住まいカンパニー「第2回 コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査

対面でのコミュニケーションを重視する日本では、テレワークや在宅勤務の導入に消極的でした。それが新型コロナの感染拡大により、人との接触が制限されたことで、テレワークや在宅勤務を導入する企業が急速に増えていったのです。

しかし、住んでいるお家の広さによっては、仕事スペースの確保が難しい場合があります。中には、リビングでお仕事をされていた方もいらっしゃるでしょうが、お子さんが大きな声を出したり甘えてきたりすると、仕事に集中するのは難しいものです。

戸建住宅は、マンションよりも専有面積が広い場合が多いため、仕事用の「個室」を確保しやすいです。そのためテレワークや在宅勤務の機会が増えた人は、マンションよりも戸建住宅を選んだと考えられます。

また戸建住宅であれば、隣の家との距離が離れていますので、音や振動が伝わってくる心配が少ないです。隣のお宅の生活音や子供が遊ぶ音を気にすることなく、仕事に集中しやすい点も戸建住宅の需要が伸びている理由の1つでしょう。

庭や屋上など遊べるスペースを確保できる

新型コロナの外出自粛により、ショッピングモールやテーマパーク、遊園地などには気軽に行けなくなりました。お子さんが、お家で遊ぶのに飽きてしまい「外に行きたい」と泣き出された経験がある方も、多いのではないでしょうか。

戸建住宅は、大きな庭を設置して水遊びやバーベキューを楽しめます。公園やテーマパークに行かなくても、子供は庭で思いっきり走り回ってリフレッシュできるでしょう。

マンションはマンション独自の「管理規約」があり、BBQが禁止されていたり、ベランダで大量の水を流すことが禁止されている(子供のプールなどですね)場合もあります。また、緊急事態宣言中はマンションに住んでいる方からの騒音の苦情が多く寄せられたようですので、戸建住宅のほうが、土地が狭い都心部でも、屋上を設けられることで子供の遊び場やレジャーを楽しめるスペースを確保できます。

ウイルス対策がしやすい

新型コロナが感染拡大するまでは、都市圏ではタワーマンションが人気でした。しかしマンションには、エントランスやエレベーターなどの共用部分があり、他人と接触する機会が戸建住宅よりも多いため、ウイルスの感染を恐れる方からの人気が低下しています。

戸建住宅は、一戸ずつ独立しているため、気をつけていればマンションのように他人と接触する機会は少ないでしょう。またマンションよりも窓が多く換気しやすいだけでなく、ウイルスをシャットアウトできる設備を導入しやすいのも、戸建住宅の優れている点です。

低金利な住宅ローン

住宅購入の後押しとなっているのが、歴史的な低金利となっている住宅ローンでしょう。住宅を購入する人のほとんどが住宅ローンを組むため、低金利だと住宅の需要が上昇しやすくなります

2020年12月現在の住宅ローン金利は、返済期間中に金利が変わる「変動金利型」で、おおむね0.4%台です。ひと昔前の住宅ローンの金利が3%や4%であったことを考えると、非常に低い値といえますね。

金利が低いうちに、ご自身の仕事環境や家族のライフスタイルに合った戸建住宅を購入するのも方法の1つです。しかし住宅ローンの返済期間は、20年や30年などの長期間にわたるため、さまざまなリスクを想定して借入額を決める必要があります。

まとめ

新型コロナの感染拡大により、新築と中古の両方で戸建住宅の需要が増加しました。需要が増加したのは、在宅勤務をするスペースや、子供が遊び回れる庭・屋上を確保しやすいことなどが理由でしょう。

2021年も、新型コロナの影響はまだまだ続きそうです。 お家時間が増えたことで「仕事に集中できない」「子供の遊び場が限られて困っている」などの悩みを抱えている方は、戸建住宅を検討されてみてはいかがでしょうか。