不動産購入には、物件価格とは別途で購入に伴う「諸費用」がかかります。諸費用の内訳は、ローンを組むための手数料や不動産を取得するための税金、不動産会社に支払う仲介手数料などです。

諸費用は、一般的に現金で用意するものとされています。しかしその金額は、不動産購入額の5~10%と大きく、現金で用意するのが難しい方もいらっしゃるのではないでしょうか?

実は、不動産購入にかかる諸費用は、住宅ローンに組み込むことができます。つまり、物件代金のみならず、諸費用もまとめて借り入れることが可能なのです。

不動産購入の諸費用の内訳と節約のポイント

まずは、不動産購入にかかる諸費用の内訳から解説します。

不動産購入の諸費用は、大別すると次の4つの項目に分かれます。

  1. 各種税金
  2. 仲介手数料
  3. 登記代行手数料
  4. 保険料

この4つの諸費用の中には、「節約できる費用」「節約をおすすめしない費用」がありますので、こちらも併せてご説明していきますね。

各種税金

住宅購入時に必要な各種税金ですが、税率は法律で定められています。減税制度が設けられていますので、条件に応じて活用することをおすすめします。

(1)印紙税

印紙税は、「不動産の譲渡(売買)に関する契約書」かかる税金です。契約金額に応じて金額は変わります。

令和4年3月31日まで(令和2年4月改訂)は減税されており、下記、不動産取引の場合の一覧金額となります。

参照元:国税庁「印紙税額」

(2)不動産取得税

不動産取得税は、土地や建物といった不動産の所有権を取得した時にかかる地方税(都道府県が課す)です。

金額は、原則として土地・建物の課税標準の4%です。しかし、2021年3月31日までに取得した場合に限り、3%に減税されます。さらに、住宅を購入した場合については、様々な減税制度が設けられていますので、購入したい物件が出てきたら担当者にいくらかかるのか確認しておきましょう。

*住宅以外の家屋(店舗・事務所等)を取得した場合は4%*

参照元:国税庁「マイホームの取得等と所得税の税額控除」

下記のリンクから不動産取得税も確認出来ますので、是非、ご活用ください。

不動産取得税算出ツール

課税標準とは?

不動産取得税を算出するときに用いられる「課税標準」は、不動産の売買価格とは異なります。

課税標準額は、固定資産税評価書や固定資産課税台帳に登録された価格です。

(3)登録免許税

登録免許税は、不動産の所有権移転登記に必要な税金です。

・土地の売買による移転登記:土地評価額の2パーセント

・建物の売買による登記

・住宅用家屋の軽減税率

登録免許税も、住宅の購入の場合は、条件に応じた減税制度が設けられています。

参照元:国税庁「登録免許税の税額表」より

(4)固定資産税

固定資産税は、不動産の評価額に応じて毎年発生する税金です。

税額は、土地と建物のそれぞれの評価額の1.4%です。固定資産税は、3年に1回見直しが行われるため、年数の経過により変動します。

土地の固定資産税は、地価の変動が激しい場所では注意が必要です。購入時から大幅に地価が値上がりした場合は、固定資産税も大きく上昇するからです。

建物の場合は、年数の経過による評価額の値下がりに合わせて、固定資産税も下がるのが特徴です。建物の固定資産税は、耐用年数から計算された減価償却の考え方に基づいて決められています。法律では定められた建物の耐用年数は、木造住宅が22年、鉄筋コンクリート住宅が47年と構造によって違います。

参照元:国税庁「耐用年数(建物/建物附属設備)」

仲介手数料

仲介手数料は、不動産購入の仲介を依頼した不動産会社に支払う手数料です。手数料の上限は、宅地建物取引業法により以下のように定められています。

仲介手数料の上限額(売買金額400万円以上の場合)=売買金額×3%+6万円

時々、「最後の“+6万円”はなんなの?」「400万円以下の場合はどうなるの?」と質問されることがあるのですが、以下の図をご覧いただくとわかっていただけるはずです。

参照元:(公財)日本不動産協会「仲介手数料について」

そもそも上記の算出式は、仲介手数料の上限額の速算式

本来、仲介手数料は、物件価格の「200万円までの部分」「200万円超400万円以下の部分」「400万円以上の部分」を分解して計算します。しかし、それではあまりに面倒ですよね。

そのため、物件価格が400万円以上のときは、400万円以下の部分にかかる仲介手数料「6万円」を分けて考えて計算します。よって、物件価格が400万円以下の時には、速算式を使わず、「200万円超400万円以下の部分」が5%・「400万円以上の部分」が4%と分けて算出しなければなりません。

法律で決まっているのは、あくまで仲介手数料の上限額不動産購入の予算が限られている、あるいは既に購入したい物件が決まっている場合には、契約締結をする前や早い段階で仲介手数料について、不動産会社側と相談しておくことをオススメします。

仲介手数料は、不動産会社の成功報酬です。売買契約が成立するまでは、原則として、不動産会社に仲介手数料を支払う必要はありません。

登記代行手数料

登記代行手数料とは、司法書士の先生に、土地と建物の移転登記を代行してもらうための費用です。不動産購入の場合は、8~10万円が相場です。登記手続きを自分で行えばこの費用は節約出来ますが、それはあまりおすすめできません。なぜなら、登記手続きは専門知識が必要なため、一般の方が行うと時間と労力を要する上に、手続きミスのリスクがあるからです。

登記移転手続きは、住民票、所有権証明書などの必要書類を取得後に、法務局で手続きします。

家は一生の買い物なので、登記移転はしっかりと確実に行いたいところです。ミスのない確実な手続きを行うためにも、登記代行手数料は節約せずに専門家に依頼しましょう。

相場よりも高いと感じる場合は、司法書士の先生の報酬部分を少し値引きしてもらえないか確認してもらいましょう。

住宅ローン関連手数料

住宅ローン関連手数料は、住宅ローンを組む金融機関を通じて支払う手数料。以下の2種類です。

住宅ローン事務手数料

住宅ローンを組む、金融機関に支払う事務手数料です。早期完済した際にも返金はありません。

住宅ローン保証料

金融機関を通じて保証会社に支払う住宅ローンの保証料です。この保証料を支払うことで、万一住宅ローンの返済ができなくなった場合は、保証会社に肩代わりしてもらいます。

保証会社が払ってくれた(代位弁済)からといって、支払わなくてもよいのでは決してありません!保証会社に対する債務は引き続き負うことになります。

一昔前まで、住宅ローンを取り扱う金融機関は、主にメガバンクをはじめとする大手銀行・地方銀行・信用金庫の3種類でした。しかし近年は、インターネット銀行でも住宅ローンを取り扱いが増加しています。

インターネット銀行は、他の金融機関と違い、実店舗がない(またはあっても数が少ない)ため人件費が少なく、その分手数料が安いメリットがあります。また、「住宅ローン保証料」が無料の場合もありますので、住宅ローンにかかる費用を低く抑えることができます。また、原則、「保証人不要」ですので、費用が安く抑えられる分、おすすめです。

しかし、インターネット銀行は、以下の3つのデメリットがあります。

  1. 審査が厳しく、承認が下りるまでの期間が長い。
  2. 実店舗がない(数が少ない)ため、対面で説明を受けられない場合が多い。
  3. 対面で質問ができないため、書類の不備に気付きにくい。(間違えると再度郵送に時間がかかる)

このように、インターネット銀行は、実店舗を持つ金融機関に比べて少し融通がきかないことがあるので、注意が必要です。特に、承認までの期間が長いデメリットは、最終段階の決済手続きに悪影響を及ぼす恐れもあります。こうした事態に備えるためにも、インターネット銀行を使う場合は、必ず事前に仲介会社に相談しておきましょう。

保険料

住宅ローンを組むために加入が必須となる場合もあるのが、次の保険です。

(1)火災保険料・地震保険料

仲介する不動産会社、または銀行が勧める保険に入るケースが多く見られますが、保険会社とサービス内容を検討することが一番重要です。

多くの金融機関では10%程度の割引きを行っている場合もありますので、保険価格・保障範囲をしっかり説明をうけて、選びましょう!

(2)団体信用生命保険料

団体信用生命保険は、住宅ローンの契約者が返済中に亡くなった場合や、高度障害状態になった場合に、ローン残高の肩代わりをするための保険です。万一に備えて、ご家族に購入した家を残すために重要な保険と言えます。生命保険としての要素も兼ね備えているのが特徴です。

ほとんどの場合において、保険料はローンの金利に上乗せされています。住宅ローンの返済金額の一部として支払うので、団体信用生命保険料には節約の余地はありません。しかし、別に生命保険に加入している場合は、住宅ローン契約に合わせてそのプランを見直すことで、生命保険料の節約も考えてみてください。

諸費用を住宅ローンに組み込む方法

ここまで諸経費の種類と節約方法についてお伝えしましたが、これらの費用の多くは契約時の支払いが必要です。そして、冒頭でも触れましたとおり、通常は「現金払い(一括払い)」です。

しかし、諸経費の金額は多くの場合で100万円を超えるため、準備が難しいこともおありでしょう。現金払い(一括払い)出来ないときには、諸費用を住宅ローンに組み込むことを検討してみましょう。

諸費用を住宅ローンに組み込むデメリット

住宅ローンの種類によっては、諸費用を組み込んで借入れることができます。諸費用は、通常金利に上乗せされます。しかし、諸費用をローンに組み込むことで、金利が上がるだけでなく、以下のデメリットがあるので注意が必要です。

  • ローン上限のうち、不動産の購入に使える金額が減る。
  • 現金を用意できないので「返済能力が低い」と見なされて、審査に落ちる可能性がある。
  • ローンの借り換えの際に不利になる場合がある。

諸費用ローンを使うという方法も

住宅ローンに諸費用を入れられない場合は、別に諸費用ローンを組む方法があります。この場合、金利を抑えるためにも、一般的なカードローンではなく諸費用を目的としたローンを選択するのがポイントです。

しかし、諸費用目的のローンであっても、金利は住宅ローンよりも高いので、繰上返済の時は優先的に返済する必要があります。諸費用ローンは金利が高いこと以外にも、手続きの手間が増えることや、毎月の返済額が増えるデメリットがあります。

まとめ

今回は、住宅を購入する時に必要な諸費用について取り上げました。

諸費用は、原則的に現金で用意しなければなりません。しかし、物件価格の5~10%ほどにもなる諸費用を用意するのは容易ではないため、状況によって住宅ローンに組み込んだり、諸費用ローンを活用したりすることも検討します。

とはいえ、金利やローン条件などを考えれば、諸費用は現金で支払うのが一番。住宅の購入まで年数がある場合は、諸費用の「一括払い」に備えて、今のうちから積み立てを始めるなど、賢い戦略を立てましょう。